(株)感性リサーチ 代表取締役社長

黒 川   伊保子

1959年長野県生まれ,栃木県育ち。’83年奈良女子大学理学部物理学科卒業。脳科学の見地から「脳の気分」を読み解く感性アナリスト。人口知能(AI)エンジニアを経て,2003年世界初の語感分析法サブリミナル・インプレッション導出法を発表,独自の感性分析術が注目を浴び,完成研究の第一人者となる。著書に「脳科学的に正しい恋愛脳の作り方」,「感じることば」「ぐずぐず脳をきっぱり治す!」など多数。

 政府が音頭を取り,人工知能の基礎研究が始まった1983年は「AI元年」と後に呼ばれました。この年,大学を卒業した私は23歳の若さで招集され,草分けの研究者となり,34年にわたり脳と向き合ってきました。
あまりに違う男女の脳
 まだ携帯電話も世の中に出ていない頃,「人とロボットの幸せな対話の設計」というミッションがもたらされました。2015年を過ぎると人工知能がこの世を牛耳り,’20年を過ぎると,人と人の間にいて,人の思いや動線を察して手を差し伸べてくる「協働型」の機械が登場すると予想されていました。機械がどんなふうに対話してくれたら,私たちはストレスなく気持ちよくいられるかという研究でした。
 私は奈良女子大学の出身で,女子寮で4年間ぬくぬくと,女ばっかりの会話の中にいました。研究チームに配属になると,私以外は全員男子。しかも,数学・情報工学の最先端の研究室なので,一般よりかなりオタクな青年ばかりでした。「幸せな対話の研究」の一番最初のミーティングで,「ロボットと人の対話という以前だわ。あなたたち男子と対話にならないわ」と思ったことを今も忘れることができません。
 私たち研究者は,人の脳を装置と見立てます。どのような入力に対し,どのような映像を施し,どのような出力をするかを見立てるのですが,「男女の脳」のあまりの違いに愕然とします。例えば,色の見え方。網膜の中に光の3原色にそれぞれ対応する色覚細胞があって,その反応の比率に基づいて,オール天然カラーで物を見るのですが,3原色色覚なのは男子だけで,女性の約半数が「4原色色覚」だということが最近わかってきました。つまり,ピンクから紫へのグラデーションを男性の何十倍もきめ細やかに見分けます。女性向けの商品にピンク色を塗るときはお気をつけください。男性が色を決めると,すっとこどっこいなピンク色ということが結構多いのです。
女の話は邪魔するな
 私の研究領域である対話でも大きな男女の違いが見つかりました。男と女の話は方向が真逆だということです。
 女性の会話は,事の発端から,プロセスをなぞるように長くしゃべります。男性からすると「結論から言えないかな」と思われるかもしれません。でも,脳は一秒たりともムダなことはしません。女性の脳は事の経緯をしゃべると,その裏で実は無意識の領域に激しく信号が流れ始め,問題解決をします。「問題解決演算」です。何が悪かったのか,誰が正しくないのか。そして,自分が悪くなかったとしても,自分にもできたことがあったはず。女性は,プロセスをしゃべりながら最適解をはじき出していきます。逆に男性はゴールから前倒しで,結論が出ているならまず結論を知りたい。
 何を言いたいのか。「女の話は邪魔するな」ということです。女性がしゃべり始めたら,気持ちよく共感して聞く。「君の気持ちはわかる」がポイントです。
 「今日,何だか腰が痛くて」。奥様のセリフだと思ってください。この国の成熟男子の多くは,いきなりこう言うそうです。「医者に行ったのか?」。皆様は大丈夫ですか。「もんでやろうか」といきなり言う方もいらっしゃるそうですが,これまた大きなお世話。ということで,この2つがなくなると,男子は何をしたらいいのかわからない。
 女の会話は共感で始めて,共感で落とす。これがセオリーです。というわけで,皆様は今日から,「ああ,腰か,それは辛いな」って言ってください。相手の言葉の反復と共感だけで,女性の脳はストレス信号を減らします。共感は,気休めではなくて絶対必要な入力です。共感するふりで十分ですので,共感してあげてください。共感のなさは,女性のモチベーションを壊滅的に下げてしまいます。
女性の点数が上がる謝り方
 男性の謝り方が間違っていることも多いです。「あなたって,どうしてそうなの?」って言われませんか。このセリフからは,女性がかなり不機嫌なのがわかるので,男性の皆様は謝るわけですが,「ああ,ごめん,ごめん」とか謝っていないですか。いきなり,ごめん,しかも2回。こんなの女性をハエたたきでたたくようなものです。相手の気持ちを言って,「ああ,嫌な思いをさせたな,ごめんね」ですよ。きざなセリフだと思っても言ってください。結婚10年以上の奥様に,いきなりこれを言うと,「ハアー?」って言われますが,それも乗り越えて言っていただくと,かなり心の中では点数が上がります。
 「仕事と私,どっちが大事?」と言われたら,「寂しい思いをさせてごめん」と,相手の気持ちで受けてください。遅刻したときも,殿方はほぼ100%遅刻した理由から言うのですが,違う,違う。待っていた彼女の気持ちから言うのです。「暑かったでしょう,ごめん」「寒かったでしょう,ごめん」。ほかの季節はこれでつなげます,「心細かったでしょう,ごめん」。全然違いますから,後の展開が。
 男女は人生に必要な感性を真二つに分けたペアの装置。ともにいらつき,ムカつき合うことで最高のパフォーマンスを出す組み合わせです。今日からは,イラッとする気持ちを全て愛に変えていただきたいです。人工知能が教えてくれた男女の真実でした。ありがとうございました。
(スライドとともに)




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