(株)電通
電通ダイバーシティ・ラボ 代表

伊 藤  義 博 氏

1981年(株)電通入社。テレビ局の媒体担当,営業としてクライアントを25年間担当。IT系子会社の代表取締役副社長を経て,2010年電通ソリューションセクター室長,電通総研研究主席,’18年よりマーケティングソリューション局研究主席。一方で’11年電通ダイバーシティ・ラボを創設。障害,ジェンダー,多文化共生,ジェネレーションの4領域で16のプロジェクトを進行中。

 9年前にダイバーシティ(多様性)に着目して,電通ダイバーシティ・ラボがスタートしました。CSR(企業の社会的責任)をビジネス化することを目指しています。障害,ジェンダー,多文化,ジェネレーション,この辺をダイバーシティの領域であると定義,きょうはジェンダーの中でもLGBTについてお話をさせていただきます。
性が変わるのは普通
 女性はXX染色体,男性はXY染色体ですね。基本設計で,女性である場合は男性が好きになるようですが,お母さんのお腹の中で7週目ぐらいになったときにXYだったら女性から男性につくりかえる。そこで今度は女性を好きになるようにしないといけない,そのとき様々なホルモンの立ち居振る舞いでセクシュアリティが変わってくるようです。
 基本,メスだけでどんどん子どもが生まれていく動物がいます。また,すべて中性として生まれてくる一部の熱帯魚は,一旦オスになるのですが,群れの中で大きくて強い個体がメスになります。
 このように研究者からみると,性が変わるということは普通にあるということです。
 LGBT。Lはレズビアン(女性同性愛者),性自認が女性であって恋愛対象も女性という方。Gはゲイ(男性同性愛者)。Bはバイセクシュアル(両性愛者),男性,女性,どちらも恋愛対象という方。Tはトランスジェンダー(生まれたときの性と自分の思っている性に違いがある方)。セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)をあらわす総称の一つということで使っております。
 まず体の性,男か女かで分かれています。実はどちらとも言えないというような方もいらっしゃいます。
 2番目が心の性です。これも実はどちらとも言えない,自分の性自認が男性かな,女性かな,はっきり決められないという方です。Xジェンダーという言い方をします。
 3番目が好きになる性です。これも男性,女性,両方ということがあります。レズビアンの方は,心の性が女性,そして好きになる性も女性。ゲイの方は,その逆。バイセクシュアルの方は男性も女性も恋愛対象ということになります。
 トランスジェンダーの方は,体の性と心の性が一致しない。その上で恋愛対象が女性であったり,男性であったりということです。
 セクシュアリティの考え方は,生まれたときに割り当てられた「体の性」でどちらとも言えないという方もいらっしゃるということ,男性寄りや女性寄りがあるということ。「性自認」も同様。恋愛対象もそのときによって変わるとか,両方という方もいらっしゃいます。最後に「性表現」,自分がどういう服装をしたいとか,立ち居振る舞いや言動をするか,そういうことも男性寄り,女性寄りという考え方があります。
性同一性障害から性別不合
 弊社は大規模な調査「日本のLGBT層の割合」をして,公表しました(2019年)。心と体の性が一致していて異性愛者をストレートと言いますが,ストレートでない方の合計が8.9%,11人に1人でした。
 また自分がLGBTだと気づいた時期という項目では,大体物心がついたころ,恋愛をする思春期,青春時代にそういうことに気がつくようですが,10%ぐらいの方は40歳を超えたころです。ホルモンや立ち居振る舞いが影響することなので,途中で変わってくるという人もいらっしゃるようです。
 国のほうでも動き始めていて,このLGBTのことについてSOGI(ソジ)という言い方をするようにもなっています。Sexual Orientation(性的指向・どの性を好きになるか)と,Gender Identity(性自認・自分の性をどうとらえているか)の頭文字です。性的指向は趣味嗜好とは違います。自分の性がどちらに向いているかということです。
 今年(’19年)の5月に「パワハラ関連法案」が国会で可決され,企業は対策をしなければならないということが義務づけられました。
 日常生活の中ではどうしていけばいいのか,SOGIのせんさく,陰口はいけません。
 先ほどトランスジェンダーに関しては「性同一性障害」と言いましたが,実は世界保健機構(WHO)では,来年(’20年)から「性別不合」になります。体の性と心の性が合ってないという話ですので,病気ではないし,障害ではないということです。
LGBTは障害ではない
 カミングアウトされたら悩みますが,正解はありません。ただ,言ってくれたということは自分を信頼しているということだと理解して,どうしてあげればいいのかを一緒に真剣に考えていただきたいと思います。打ち明けられたからといって,本人の同意なき第三者への口外は絶対禁止です。
 もう一つ,Unconscious Bias(無意識の偏見)。たくさんの情報をさばくためには,第一印象,直観も大事です。けれども,もしかしたらその中にはLGBTの方に対しての無意識の偏見があるかもしれません。理性と知性を使って対応することです。
 LGBTは障害ではありません。しかし本人の力ではどうしても変えられないということがあるわけです。彼らは特別扱いしてくれと言っているわけではありません。公平でない扱いを受けているということが現実としてあると理解いただければと思います。
 すべての働く人,あるいは生きている人すべてがそれぞれの多様性を受け入れてもらうことで幸せが増していく,公平性が増えていく,そういうことではないかと思っております。
(スライドとともに)


(C) Copyright 2002. The Rotary Club of OSAKA、 All rights Reserved.