気象予報士・防災士

蓬 莱  大 介 

1982年生まれ。兵庫県明石市出身。早稲田大学政治経済学部卒業。俳優を志すも書店で見つけた「気象予報士資格」に惹かれ,2009年合格。’11年から読売テレビの気象キャスターとして活躍。現在「情報ライブミヤネ屋」「かんさい情報ネットten.」「ウェークアップ!ぷらす」等に出演。司会者との掛け合いやイラストで天気を伝えるスケッチ予報が人気。講演ほか全国で活動中。

 2010年に気象予報士になりました。自分で観測をして論文を発表するというようなことではなく,そういった方の論文などを勉強して,一般の方にわかりやすく伝えるという役割をしております。
自分が絶対助けると心に唱える
 3つの番組を担当しています。「情報ライブミヤネ屋」の場合は,主婦の方など大人の女性,土曜朝の「ウエークアップ!ぷらす」は男性の年配の方を意識しています。
 もう一つは「かんさい情報ネットten.」という夕方の番組で関西限定。家族が晩ごはん食べながら,準備をしながら,というのを意識しています。子どもから「おじいちゃん,おばあちゃん,田んぼの様子を見にいったらあかんよ」と言うことができるぐらい,子どもが僕の天気予報を聞いて真似できるぐらいのわかりやすさを目指しています。
 視聴者が自分でもできそうだ,やりたいと思ってもらえることが一番うれしいです。天気予報を見て「難しいこと,詳しいこと知っているな」と思われても「で,明日の天気何なん?」と言われたら意味がありません。
 天気予報は,人の死に直面するということです。特に台風の時,僕の一言で,何百人も死ぬかもしれないというプレッシャーを感じながら天気予報をしています。逃げ出しそうになることもあります。次の雨がいつ降るのかというのを正確に伝えよう,「自分が絶対助ける」ということを心に唱えながら天気予報をやることもあります。
 特別警報が出されるようなときというのは,自衛隊出動のレベルが起きているときと考えていただきたい。特別警報が出たときというのは外にも出られないような状況です。警報の段階で注意しなければならないのです。
 テレビの天気予報というのは,ニュースコーナーの最後のほうに3~4分。天気図を解析したり画面をつくったりすると,4時間ぐらいかかります。その下には,積み重ねた経験,知識,思いなどがギューッと詰まっていて,味の濃い天気予報をお届けします。
異常気象
 異常気象について,気象庁は定義を決めています。ある場所,ある時期において30年に1回以下で発生する現象。つまりその場所で昔から滅多に起きないような現象のことを言います。異常気象というのは,暑さ,大雨だけではなく,偏西風の微妙な流れから寒波もやってきやすくなります。
 起こってからなぜ起こったかという理由は説明できますが,毎回,悪条件が偶然重なることがあると,何かおかしいのではないかと疑うのが自然です。
 今,気象学者が最も注視しているのは地球全体の気温です。1890年ごろから1年ごとの地球全体の気温の変化を見ますと,今地球全体で,100年間で0.7度気温が上昇しています。地球全体で0.7度というのはかなり大きな数字です。気温が上がり続けたときに地球で何が起こるのか。果たして今の生活が維持できるのかというところが問題になっています。ここ2000年に関して100年で0.7度も上がったことはありません。
 もう1つのデータ,1985年から観測している二酸化炭素の濃度の上がり方も急激です。二酸化炭素というのは温室効果ガスと言われ,地球の周りにこの温室効果ガスがあると,地球の熱が宇宙に逃げていくのを閉じ込める役割をし,地球を温め過ぎてしまうのです。地球全体の気温が上がっている原因は,ここ130年,産業革命以後に,化石燃料を燃やしたり,森林などを伐採したりする人間活動の影響が主な要因である可能性が高いと言われています。また人口増も懸念されます。
 それで国際会議でパリ協定というのが決まりました。2015年,世界190ヵ国で,温室効果ガスを出すのを控えましょう,住めなくなるかもしれないと話し合われたのですが,今週,アメリカのトランプ大統領がパリ協定を離脱すると発表しました。
 アメリカは,世界第2位の温室効果ガス排出国です。まだまだ経済成長したい3位のインドにとって「アメリカが抜けたのだから,俺も約束守らない」となり,気象学者,気象関係者は世界全体でこの地球温暖化対策が進まなくなってしまうのではないかという危機感を持っています。
やるべき対策, 心構え
 「地球温暖化」と日本では言われておりますが,世界では「気候変動」に変わってきました。さらに今年から「気候危機」と言われています。海外メディアはこの言葉を使い始めています。気候危機と言っているのです。
 やるべき対策というのは大きく分けて「緩和策」と「適応策」の2つ。温室効果ガスを減らす対策と,この温暖化の悪影響に備える対策の2つです。今一番真っ先にやらなければならないのは「備える対策」です。
 国土交通省は「局地化・集中化・激甚化,最近の雨の降り方は新たなステージに入った」と表現しています。堤防やダム,ハード面で防災対策をしてきましたが,それらが通用しなくなっています。これらに合わせて情報,そして早めの避難をするソフト防災もあわせてやってくださいと呼び掛けています。
 僕はいつも講演会の最後に言います。「災害は忘れたころにやってくる」という時代じゃなくて「災害は忘れる前にやってくる」。「まさか自分が」ではなくて「もしかしたら自分が」という意識です。
 災害が目の前に迫ると自分は大丈夫だと思いがちですが,その思い込みの呪縛を解くもう1つの呪文があるのです。心の中で「念のために」とつぶやきます。「念のためにちょっと早めに避難しとこう」と。そうすると自分だけは大丈夫と思い込む呪縛が解けるかもしれません。近年特に極端な天気が増えています。早めの避難を心掛けていただければと思います。
(スライド・映像とともに)


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