会 員

塩 野  秀 作 君(香料製造)

1952年明石市生まれ。’71年熊本県立熊本高等学校卒業。’76年慶應義塾大学商学部卒業。同年出光興産(株)入社。’83年塩野香料(株)入社,’90年同社取締役,2001年同社代表取締役社長就任。’15年日本香料協会会長。’17年公益財団法人関西生産性本部理事就任。’02年10月当クラブ入会。

 本日は「当社の創業と沿革」「当社のグループの概要」「香料とは」「香料の原料と製造方法」「香料の知識」についてお話しします。
薬種商から香料商へ 東洋一の香料工場設立
 私どもの会社は,文化5(1808)年に塩野屋吉兵衛商店として創業。道修町で腸チフスに効くと思われる薬をそろえて提供していた,と聞いています。二代目の三男・義三郎は隣に分家して,塩野義三郎商店,現在の塩野義製薬を始めました。続いて,三代目塩野吉兵衛。明治22(1889)年に大阪製薬(大日本製薬の前身)設立の発起人になっています。それから,働いている人を教育していく学校が必要だと,道修薬学校を明治37(1904)年につくりました。後の大阪薬科大学です。
 和漢薬の仕事をやっていたのですが,なかなか売れなくなってきて。義三郎に相談したら,「フレーバーやフレグランスの仕事がヨーロッパでいいビジネスになっている」と。そこで,明治41(1908)年に香料商に転向することになりました。大正9(1920)年には香料製造業に進出し,国産初のエッセンス「扇印ブランド」を生産開始。昭和4(1929)年には塩野香料株式会社を設立し,ラムネの香料を開発して展開。シェアは大体5割以上を占めていたと聞いています。塩野香料は台湾や中国上海に会社をつくったり,医薬品の原薬を生産したりして,今では順調に売上利益を伸ばしております。BtoBの仕事がメインですが,株式会社キチベエをつくってBtoCにも取り組み,パリのメゾン・エ・オブジェに出展。今は高級芳香剤やアロマキャンドルの通信販売もしております。
 続いて,塩野香料の概要です。神崎川の川べりにある大阪工場は,設立当時1万2,000坪の土地で,東洋一の香料工場と言われておりました。医薬品原薬の会社・塩野フィネスの本社は大阪で,事業所は福井。これも1万坪の土地を購入して研究所と工場をつくりました。海外にも進出して,台湾塩野香料では新北市に本社と工場があって46名,上海芳精香料では上海市松江に本社と工場があって65名の従業員がいます。また,バンコクに駐在員事務所,ソウルに代理店もあります。
ガスに臭い付けて危険を知らせる役割も
 いよいよ,「香料とは」です。香料はいろいろな天然のものから抽出しています。植物は,花や葉っぱ,枝,木,種子,果皮など。動物では,マッコウクジラ,ジャコウネコ,ジャコウジカ,ビーバーなどの分泌物から得られます。スカンクは敵が襲ってきたときに「スカトール」というガスを出します。この臭いは強烈ですが,何十万倍に薄めるといい香りになる。シャネルの№5にも入っていて,高い香水はこういうものが入って魅惑的な香りに仕上がっているんです。
 香料は,生活の色々な場面でも役立っています。カレーのルーを溶かしただけでじっくり煮込んだ肉の風味がするように。花の香りはトイレの臭いをすっきりさせる。ミントの香りで口が爽やかとか。入浴剤にも使われています。変わった例では,台所で使う天然ガスは臭いがしないので,非常に危ない。わざわざブチルメルカプタンという香料で臭いをつけて,ガス漏れに気付けるようにしています。
 香料は用途によって2種類あり,食品に用いられるものを食品香料(フレーバー),日用品に使われるものを香粧品香料(フレグランス)といいます。原料が天然物由来のもの,化学的な合成によるもの,それらを調合したものの3種類に分類されます。天然物由来の香料は,天然物から抽出・圧搾・蒸留などをして香り成分を取り出し,天然香料として使います。化学的に合成された香料の1例として,d-limonene(デーリモネン)を紹介します。オレンジの皮を搾ると出る汁です。昔,ニューヨークの地下鉄は落書きが多かったのですが,これを使うときれいに取れて,でも塗装面は傷めないということで有名になりました。その後,これを使った洗剤が非常に増えました。最後に,天然香料と合成香料を調合したものが調合香料です。
 原料香料の製造は,鉱物・植物・動物を素材として使用します。鉱物は大体石油からつくるので合成香料,植物や動物からつくると天然香料になります。調合香料の製造は,原料香料とアルコールと精製水,油脂など大体40~50ぐらいの材料を調合して1つの香料をつくり上げる。それを加熱や冷却,熟成し,ろ過して最終的に香料や香料製品にします。
アロマで海馬の機能を回復して認知症予防に
 香料には4つの役割があります。1つは,加工食品に本来の食品の持つ香味を付与すること。例えば,オレンジジュース。実はブラジルからたくさん輸入されているのですが,熱をかけて5分の1濃縮をしている。水は飛んで物流経費は安くなるのですが,匂いは非常にイモ臭くて「こんなの飲めないよ」となる。そこで香料会社の出番です。もともとあったオレンジの成分や香り成分を付与すると,おいしい味へと変わります。2番目はスポーツ飲料などの機能性食品・飲料への香味付け。3番目は芳香剤,入浴剤,シャンプー,リンスなど,快適な生活の手助けです。4番目は危険予知の手助け。先ほどの無臭の天然ガスに臭いをつけるなどですね。
 最後に「香りの効用」について。香りをかぐと,嗅覚を司る中枢神経に刺激が伝わります。そうするとその刺激が隣接する記憶を司る海馬に伝達され,記憶を引き出しやすい状況になる。鳥取大学医学部の浦上克哉教授が実証実験を行い,2010年にNHK「あさイチ」で発表。アロマの香りで一度弱った神経細胞が蘇る,海馬の機能が回復することが実証的にわかっています。意識的に匂いをかぐ習慣を身につけると,認知症予防になるようです。
 さらに香りについて詳しいことを知りたい方は,私の著書「香りを創る,香りを売る」にも,お目通しいただければ幸いです。
(スライドとともに)





(C) Copyright 2002. The Rotary Club of OSAKA、 All rights Reserved.