大阪YMCA
総主事

小 川  健一郎 

1970年東京都生まれ。’94年東洋大学経営学部卒業。東京YMCA入職,公益財団法人北九州YMCA理事長を経て,2018年4月から大阪YMCA総主事,公益財団法人大阪YMCA代表理事。青少年育成大阪府民会議常任委員,一般財団法人大阪ボーイスカウト振興協会評議員,学校法人西南女学院理事,公益財団法人アジア女性交流・研究フォーラム理事など。

 ロンドンで始まったYMCAは今年で175周年。世界120の国と地域にあり,1882年創立の大阪YMCAは,日本で2番目に長い歴史を有します。私たちのグローバル人財養成の事業をいくつかご紹介します。
多岐にわたるグローバル人財養成
 「グローバル人財」は一部のビジネスエリートだけを指すものではありません。外国語は必要ですが,外国人と同じ空間に過ごすことが当たり前になった今,語学だけではないと考えています。北九州YMCAで10年ほど日本語学校の校長をしていた時,外国からの留学生が生活のためのアルバイトが見つからず困っていました。ある日モンゴルの女性から「コンビニでアルバイトが見つかりました」と報告を受けました。留学生を雇うと,日本語ができないだけでなく,遅刻するなど様々な問題もあります。それを乗り越えてコンビニを経営される店長さんを,私はグローバル人財だと思いました。
 さて,大阪YMCAは,ウェルネス(キャンプ・野外活動,スポーツ),学校教育,社会福祉(保育園,シニア),グローバル・総合研究所などの事業を行い,教育分野では世界で一番力があるYMCAだと思います。
 今年1月,パートナーシップ先の1つ,オーストラリアのビクトリアYMCAと組んでカンボジアでボランティアスタディーツアーを行い,大阪からも若いユースが1名参加しました。毎年,約100名が参加するグローバルユースカンファレンスでは,昨年8月は日本人35%,約20カ国から参加した外国人が65%でした。公用語は英語で,4泊5日で親睦を深めながら,最後は各自が出身国代表となり,模擬国連で意見をまとめることに挑戦します。会場の六甲山YMCAは,1953年8月にロータリークラブ(RC)の少年キャンプを実施した場所で,RCからはボートの寄贈も受けました。また,徳島県阿南市のYMCA国際海洋センターのキャンプ場でも毎夏,外国人と日本の学生が一緒に活動しています。
 2001年には英語で教育するインターナショナルスクールを開校しました。後述するIB(国際バカロレア)とアメリカのWASCに準拠した,小・中学生を対象とする学校です。ここで人財養成を行ってきた経験が,今年4月からの大阪市立水都国際中学校・高等学校の運営の受託にもつながっています。
 全国の専門学校の英語スピーチコンテストでは2年連続,私どもの代表が文部科学大臣賞を受賞。今回は,母国では英語をほとんどしゃべっていなかったタジキスタン出身者が1位になりました。子ども向けプログラムでは,大阪,ソウル,台北から集まって国際バスケットボール大会を毎年行っています。
思いやりに富む若者育成を目指すIB教育
 精神・知性・身体のバランスのとれた人財形成を目指す全人教育を世界で行ってきたYMCAにとって,国際バカロレア(IB)は非常に親和性のあるプログラムです。
 近年,批判的な思考や創造的思考が求められる中で,学習も知識を教える伝達型から,各自が探究するかたちへと変化。またIT技術や専門を超えた協働が求められ,コミュニケーションスキルも必要です。この流れは生徒を主体としたIBプログラムと通じています。教師はファシリテーターとして生徒のモデルとなり,生徒は自立した研究者として学び,様々なリソースを用いながらつながって多様な世界の価値観を共有していきます。
 IB機構は1968年にスイスで設立された非営利教育団体です。国連などで働く人の子が,どこでも大学に入れる資格,通称「DP(ディプロマプログラム)」を取得できるようにと作られました。「考える」「探究する」ことを求めるプログラムで,カリキュラムの特徴は①課題論文②学際的な観点から知識,理性的な考え方,客観的精神を養うTOK(Theory of knowledge)③創造性,行動,奉仕の英語の頭文字を取った通称CAS(キャス)―の3つです。生徒たちは例えば「地図は事物を単純化してこそ有用なものとなる。この考え方は知識に対してどの程度当てはまりますか」といった課題を数カ月かけて論文にします。
 IB教育は多様な文化の理解と尊重の精神を通じて,より良い平和な世界を築くことに貢献する探究心,知識,思いやりに富んだ若者の育成を目的とし,対象は3歳から19歳。現在世界5,271校に広がっています。設置校のトップはアメリカですが,エクアドルの3位が注目されます。公式言語は英語,フランス語,スペイン語。日本語によるプログラムも開発されており,日本では’79年に大学入学資格が付与され,認定校は現在62校。IBを活用した大学入試は,全学部実施が28大学,一部学部実施が26大学あります。
大阪市立の中高一貫校でIB教育を実践
 この流れの中で南港ポートタウンに,大阪市立水都国際中学校・高等学校が今年4月からスタートします。2017年12月に国家戦略特区に承認された「公設民営」の学校です。大阪市立ですが,運営は大阪YMCA。英語教育に重点を置いた教育課程と,高等学校でIBのDPを実施する中高一貫校です。学費は中学校が無料,高等学校は公立学校と同額。最大定員は中・高合わせて720名。先日の中学校入試は定員80名に対して倍率は約6.3倍でした。
 開校時の教員数は全体で27名を予定しています。日本人が18名,外国人が9名です。大阪YMCAが現在行っている学校事業,こども園事業,グローバル・総研,ウェルネス事業,シニア事業など,民間ネットワークをできるだけ活用することに正面から取り組もうと考えています。
 異文化を持つ人と人が共に暮らす社会で,争いごとをどう乗り越えていくのか。平和の実現にはグローバルな視野での人財養成が必要です。勇気と忍耐が必要な取り組みですが,混沌とした世界に平和が実現されることを祈って,私たちも取り組んでいきたいと考えています。
(スライドとともに)


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