RI第2660地区2017~18年度
ロータリー財団グローバル奨学生

バッティー 亜夢斗 
      (大阪西南RC推薦)

1994年5月生まれ。兵庫県神戸市出身。私立西大和学園高等学校卒業。大阪大学人間科学部人間学科グローバル人間学専攻地域秩序論卒業。2017〜18年度2660地区グローバル奨学生として,’17年9月〜’18年7月までロンドン・スクール・オブ・エコノミクス紛争学コースに学ぶ。OPCW(化学兵器禁止機関)に就職が決まり,来年1月から東京の外務省本部で1ヵ月の研修後2月からハーグの在オランダ大使館に勤務予定。

 このたびはロータリー財団の奨学生として就学の機会をいただき,本当にありがとうございました。
平和構築の道めざし奨学生に応募
 世界の問題の中でも,紛争,戦争,平和という道に進んでいきたいと思ったのは,大学3年時に初めて父の出身地パキスタンを訪れたのがきっかけです。その時,反政府組織タリバンの支配地域から来たアフガニスタン難民から非常に衝撃的な話を聞きました。「タリバンが支配している方が治安がよかった。政府は汚職がひどく何もしてくれない」。国家が安全や教育,食などを国民に十分に提供できない環境下では,人は簡単に武装集団にもなびいてしまう。残忍な武装集団にも,安全を守ったり,教育や食を提供したりという人間的な側面があると知りました。
 この出会いから,紛争を軍事的な解決ではなく,もっと平和的に解決する方法があるのではないかと,紛争解決や平和構築の道に進みたいと考えるようになりました。
 国際機関での勤務は,大学院修了が必須です。世界トップクラスの大学院で自分を成長させたいと思いながらも費用面がネックでした。その時に,ロータリークラブ(RC)の6重点分野のうちの一つ,「紛争と平和構築」の理念と自分が目指す方向性が一致していると感じ,グローバル奨学生に応募させていただき,幸運にも派遣が決まりました。
 ロンドン大学政治経済学院(LSE)は,世界140ヵ国以上から集まるダイバーシティーあふれる大学です。そこで,紛争に特化した学問を修めさせていただきました。
大学院と現地RCで密度の濃い時間
 履修した「比較紛争分析」では,紛争発生のメカニズムから終結,その後の平和構築まで幅広く学びました。よく「民族紛争」と言いますが,そもそも民族とは何か,本当に民族的な差異が紛争の要因なのか。「テロリズム」の定義とは? これらが非常に政治的かつ恣意的に運用されている言葉と把握した上で,内戦の発生要因や動員メカニズムを探る。終結後は,どんな平和条約を結べば安定して紛争のない状況が持続できるか。民族や宗教,社会的格差によっていろんな分断が見られる社会において,どんな選挙システムや政治の意思決定メカニズムをつくれば統治できるか。トランジショナル ジャスティス(移行期の正義)は,主に戦後処理,戦争の負のレガシー(遺産)とどのように対峙するのかという学びで,靖国問題をはじめ国内に様々な意見が交錯する課題を持つ日本人として,非常に考えることの多い授業でした。
 現地での生活は,本当にRCに支えられました。お世話になったエンフィールド チェイスRCは,ロンドン郊外の総勢20人ほどのアットホームなクラブで,女性が多く人種も多彩でした。
 驚いたのは,朝7時半からの例会の後に皆さんが仕事に行かれていたこと。カウンセラーのクリス様と夫のパット様には,初めての留学で不安を抱えた僕に大変温かく声を掛けていただきました。ロンドンの地区大会や,クリスマスの特別朝食会とチャリティーイベントなどイギリス文化にも触れさせていただきました。日本からはカウンセラーである大阪西南RCの太田様にもお越しいただき,本当に恵まれていたと思います。世界中からロンドン地区で学ぶグローバル奨学生対象のイベントにも参加して密度の濃い時間を過ごさせていただきました。
 紛争分野では今後のリスクを上げる二つの課題があります。一つは「台頭するナショナリズム」。もう一つは「軍拡競争の激化」。2017年の世界の軍事費総額は1兆7,390億ドル(約200兆円)。冷戦後の最高額で,アメリカの中距離核全廃条約の離脱,米・中・露の対立が軍拡競争をあおり,多極構造下での戦争リスクを増大させるといわれています。
化学兵器廃絶目指して貢献したい
 これからは,本当の意味で人々から支持されるグローバリズム,世界の政治家から信頼される国際協調の流れをつくっていく必要があります。
 その旗振り役である国際機関の一員として貢献したいと考え,来年2月から2年間オランダのハーグで,化学兵器禁止機関(OPCW)の日本政府常駐代表部の専門調査員として勤務します。化学兵器の完全な廃絶を目指し1993年に設立された国際軍縮機関で,世界193ヵ国が加盟しています。設立以来,90%以上の化学兵器をOPCW査察下で処理し,化学兵器廃絶に対して大きな成功を収めた一方で,化学兵器廃絶が宣言されたシリアの内戦で近年使用されている現実があります。査察システムに問題があったのではないかとの疑念から内部で対立が生まれ,一部の国は脱退も示唆しています。今OPCWは,誰がシリアで化学兵器を使用したのか調査しています。進行中の紛争で国際機関がこういった調査を行うのは非常に画期的なことで,今後の紛争抑制に意味があると感じています。正念場を迎えているOPCWに,日本政府代表部の一員として参加させていただくことに大きな責任を感じています。
 今日の発表の場をいただけたこと,多くのロータリアンの皆様に支えていただけること,世界中から志を同じくする仲間と出会えること,ロータリーのグローバル奨学生制度は世界最高の奨学生制度だと思います。いつか「彼を選んでよかった」と皆様に言っていただけるよう努力していく所存です。これからもよろしくお願いします。
(スライドとともに)


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