延暦寺
代表役員・執行

小 堀  光 實

1976年3月大正大学仏教学部卒業。’79年3月比叡山延暦寺 三ヶ年籠山遂業。同年4月延暦寺一山 寂光院 住職。比叡山 行院指導員を始めに延暦寺会館副館長,天台宗国際宗教協力協会事務局次長などを歴任。’97年11月延暦寺副執行(参拝部長)に就任。その後,教化部長,管理部長,法務部長など数々の役職を歴任。2009年4月僧正補任,’14年6月延暦寺執行に就任(現在に至る)。その他,世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会評議員等務める。

 比叡山からの発信としては2017年の8月3,4日の2日間,比叡山宗教サミット30周年記念「世界宗教者平和の祈りの集い」を開催しました。30年前,世界の平和を祈るために,比叡山に世界の宗教の代表者が集まり,宗教者によるサミットが行われました。平和のために,われわれはどのような働きをしていかなければならないかを協議し,膝を交えた忌憚のない意見の交換が行われたのです。30周年を迎えて冊子もございますので,見ていただければと思います。
存在を互いに認め合う尊さ
 今から千二百数十年前,比叡山を開かれたのは,伝教大師最澄というお坊様です。それまでに,仏教は鑑真和上が日本の国に広めており,奈良の都に栄えた南都の仏教が大きく発展していきます。平安の時代になると,新しい宗教者,仏教者が誕生。最澄上人は比叡山の山の上に,弘法大師様は和歌山の高野山に山を開かれました。
 最澄伝教大師様は中国に渡られましたが,1年で帰る還学(げんがく・短期留学)で国から許可を得て,1年後に帰国しました。
 説かれたのは,自分の持っている力を精一杯発揮して,その力が世の中の力になれということです。人々にとって,あっては困る力ではなくて,なくてはならない力になれ,ということです。「和」ということを強調されたのです。世の中にはいろいろな国々,人種があって,言葉も違う。当然ながら考え方も生き方も違います。けれども,存在を互いに認め合って,手を取り合っていくことの尊さを,仏教の言葉に置きかえて,比叡山の山から発信されたわけであります。
 比叡山の山の上に,1200年間燃え続けているともしびがございます。世にいう「不滅の法灯」,「消えずのともしび」です。伝教大師最澄様がいろいろな教えを,この比叡山から発信していく際,それをひとつの形として残すということで「ともしび」を灯されました。
 「明らけく後(のち)の仏の御世までも光りつたへよ法(のり)のともしび」。「法のともしび」というのは,仏法のともしびです。「明らけく後の仏」といいますのは,地球上にお釈迦様に代わって弥勒菩薩が56億7千万年後に現れますが,仏法を絶やさないでほしい,ということです。人々の心の支えであり,また道しるべとして,仏法を大事に守り伝えていきたい,守り伝えていってほしい,このともしびを消さないでほしい。それを詩歌に謳われました。
 詩歌の通り,1200年前伝教大師が灯されたその火は今日までまだ燃え続けております。それを伝教大師の心として,またお釈迦様の教えとしてこれからも守り伝えていきます。
今年の言葉「憶和敬」を発信
 今は亡き京阪電鉄CEO,大阪商工会議所の佐藤茂雄会頭(当時/元会員)からは,長年いろいろお知恵をいただきました。「伝教大師のお心,本当に大事にしてほしいし,そして広く,広く世界に発信してほしい」とおっしゃっていました。
 1年を締めくくる言葉として,京都の清水で漢字の一文字が年末に発表されますが,「比叡山は,新しい年を迎えて,こういう気持ちで比叡山の坊さんはじめ勤務者は過ごしますという言葉を考えてはどうか」と8年前に言われました。そこで,その漢字を決めましたが,発表しなかった。翌年,佐藤氏は,「発信する方法がまずい。その言葉をしたためてどこかに掲示をするべきだ」とお話になりました。さらに翌年には「掲示をするだけではだめ」とお知恵をいただき,名刺サイズの紙を作っています。二つ折りになっているものを開きますと,その中に言葉の意味が書かれています。
 平成30年,新しい年を迎えたその瞬間,比叡山から発信した今年の言葉は「憶和敬」(おくわけい)でした。「和して敬うを憶(おも)う」。昨年,世界を見回した時,「自分の国さえよければいい」という,ある国の大統領の言葉が非常に気になりました。伝教大師のお言葉をもってして,世の中の人々は共に,意見が例え違っても,和して互いに手を取り合ってその存在を認め合う,これが一番大事なのではないでしょうか。一番大事なのは,「相手を讃える」ということであろうということであります。
 「憶和敬」の「憶」は,心にしっかりとどめおくという意味があります。「和して敬う」をこの1年間心にしっかりとどめおいて日々過ごしたいと,この言葉を発信いたしました。
 3年前には「尽真心(じんしんしん)」という言葉を発信いたしました。真心を尽くすという3文字です。真心を尽くす1年間にしたい。言葉で何となくわかると思います。思いやりとかいたわりとか愛情というのは,「真心」の言葉で表記されているものではなくて,「嘘偽りのない本物の心」が真心です。きょうも皆さんに,嘘偽りのない本物の心,真心をもってお話をさせていただきました。裸同士の本物の自分自身を出していく。そういうような生き方を,比叡山から改めて発信をさせていただきたいと思います。
家で「ただいま」, 忘れずに
 皆さんは毎日お仕事でお疲れになって帰られます。家に着くと,「ただいま」とご挨拶をしていらっしゃると思いますが,「ただいま」は必ず言ってください。その一言だけで,周りの雰囲気,お家の雰囲気が明るくなります。「ただいま,あ〜あ」と言ったら,そこで話は終わります。「きょう,よかったぞ」と言えば,話題に花が咲くのではないでしょうか。これが「憶和敬」,相手を讃え,敬意を表するという想いでございます。
 本日は誠にありがとうございました。




(C) Copyright 2002. The Rotary Club of OSAKA、 All rights Reserved.