台北駐大阪経済文化弁事処
処長

陳   訓 養

1955年台湾花蓮県生まれ。’80年中国文化大学大学院日本研究科修了。’87年日本・岡山大学大学院教育学研究科修了。同年外交領事試験合格,’88年慶応大学国際センター研修。’92年台北駐日本経済文化代表処秘書官,2002年台北駐福岡経済文化弁事処部長,’16年9月現職。

 台湾と日本は地理的に一衣帯水の隣国であり,歴史的なつながりも深く,文化交流も密接です。
 台湾はかつて,ポルトガル語で「フォルモサ(麗しき島)」として知られていました。1662年,鄭成功はオランダを追放して,台湾島で初めての漢民族の政治的実体である東寧王国を設立。その後,清王朝は台湾を福建省に編入しました。そして,1895年,日清戦争の下関条約によって,日本に割譲されました。第二次世界大戦の結果,中華民国に編入されました。日中戦争が終わると中国は内戦となり,蒋介石の政権は1949年台湾に移ってきました。
 戦後は,日本と正式な外交関係を樹立して,以来相互に大使館を設置しましたが,国際情勢の変化により’72年に双方は外交関係を停止しました。それでも,両国政府は二国間の密接な実質的関係は維持するため,台湾側は「亜東関係協会」を設立し,日本側は「財団法人交流協会」を設立しました。台湾の人口は2,357万人。面積は,約3万6,193km2で九州よりやや小さいぐらいです。
烏山頭ダムや鉄道整備で近代化
 台湾に対する日本の貢献をいえば,日本割譲の1895(明治28)年から終戦の1945(昭和20)年までの50年と6カ月の間は,近代化の基礎となりました。1905年から’40年まで計7回の国勢調査があり,戸籍制度が作られました。交通・電力・農業・水利・金融等のインフラの建設もされ,1895年に260万人だった台湾の人口は,1945年には650万人へ増加しました。
 農業では,烏山頭ダムと嘉南大圳(たいしゅう)があります。台湾の南部,つまり嘉南平原は川がほとんど存在していない上,降水量が乏しく,秋から冬にかけて荒野になっていました。その時,総督府の技師の八田与一氏が10年の歳月を費やし,当時東南アジア最大の鳥山頭ダムを完成させました。’34年に重要部分が完成すると,嘉南平原の水利の実現に伴い,台湾耕地の面積の14%に及ぶ広大な土地を創出しました。医療面でも伝染病の発生を抑止する施策を採用。教育制度を普及させ,現在の台湾の教育水準の高さに一定の影響を与えました。
大地震発生では互いに義援金
 日本と台湾は,同じように災害が多い国です。’95年の阪神大震災の時,台湾は2,000万円の義援金を出しました。その時,私は東京にいて,1月17日の震災の3日後,林金莖(りんきんけい)駐日代表と一緒に新幹線と車で4時間ぐらいかかって神戸市役所にたどり着いて,市長に義援金を渡しました。一方,’99年の台湾中部の集集大震災の時には,日本は世界で一番早くレスキュー隊を派遣。日本政府が交流協会を通して20万ドルの義援金を送り,日本の国民から30億円の義援金をいただきました。日本財団から3億円の提供もあり,多くの仮設住宅が建設されました。
 そして2011年の東日本大震災の時は,台湾政府より1億台湾ドル,台湾各界から200億円以上の義援金を日本に贈り,恩返ししました。
 こういう助け合いは,両国の国民の心の中に根づいています。台南地震の時も,日本から義援金をいただき,’18年の花蓮地震では,安倍首相から直筆の「台湾加油」,つまり「台湾頑張れ」という意味の色紙と,台湾の蔡英文総統閣下への見舞い状が届きました。まさに「まさかのときの友は真の友」です。
 台湾民意基金会の調査で,台湾人に日本について聞くと,好感度は83.9%でした。また,台北駐日経済文化代表処の去年の調査で,「台湾に親しみを感じますか?」,と日本で聞くと69%が肯定的でした。
対日関係で新たな時代始まる
 ’17年,台日間において重大な進展がありました。台日の窓口機関の名前が1972年設立の「公益財団法人交流協会」から,去年1月から「公益財団法人日本台湾交流協会」へ変更され,「亜東関係協会」は,2017年5月に「台湾日本関係協会」と名称を変更しました。互いの立場を認めるそういう名称変更は非常に有意義な出来事です。対日関係の新しい時代が始まったといえます。
 5月の世界保健機関(WHO)総会を巡っては,菅官房長官と日華懇の平沼会長,古屋幹事長(ともに肩書きは当時)らが台湾の参加を支持するということを表明しました。一方,日本でBSEが発生した’01年以降,日本産の牛肉は台湾への輸入が禁止されていましたが,去年の9月に解禁しました。
 台湾と日本は生命共同体です。中国は,日本や台湾の周辺海域で空軍と海軍の哨戒活動を活発化しています。中国の空母遼寧の台湾海峡の航行など,台湾への軍事的な圧力を強めているのです。
 ’11年に安倍首相は台日文化経済協会のシンポジウムの演説で,自由,民主主義,基本的人権,法治の4つの価値を重視し,外交目標として日本と台湾が同じ価値を共有している大切な仲間であると発言しました。また,安倍首相はわが国は台湾と基本的な価値観を共有しており,台湾はわれわれにとって重要なパートナーであると述べ,さらに安全保障関連法は中国の拡張主義に歯止めをかける上で必要であって,台湾海峡の平和と安定は一つの重要なポイントであると明言しています。つまり中華民国の台湾と日本は普遍的な価値を共有しています。
 今後は,地方交流も大切で,日本と台湾の地方観光,物産,経済,文化などを強化していきたいと思います。
(スライドとともに)




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