(株)電通 京都支社
プロデューサー

各 務  亮

2002年から海外拠点で日系グローバル企業の海外戦略を担当。’11年京都支社へ帰任後,京都のグローバル企業海外戦略を担当しながら,伝統工芸の海外発信プロジェクト「GO ON」はじめ各種文化プロジェクトのプロデュース多数。まだ世にない価値を生み出す,事業クリエーション,サービスクリエーションに挑戦中。内閣府クールジャパン戦略推進会議メンバー,経産省クールジャパンビジネスプロデューサー,観光庁目利きプロデューサー,京都市産業戦略懇談会委員,伝統産業活性化推進審議会委員 他。

 以前は10年間,インド,中国,シンガポールなどを転々として仕事をしていました。7年前,京都支社に勤務し,豊かな京都,関西の暮らしを日々楽しませていただいていると,日本が持っている文化の力を,日本の力に変えることができないかと考えるようになりました。京都の伝統はこの30年間ぐらい,ものすごい勢いで縮小しており,多くの伝統工芸が継承の危機に瀕しています。伝統を少しでも未来につなぐことをお手伝いできればと考えています。
 一つが「GO ON(ゴオン)」という取り組みです。京都の6社の後継者の方々にお力添えいただき,海外に伝統工芸品を展開する活動をしています。例えば,西陣織の細尾さんという12代目の方や,お茶筒を作られている開化堂6代目の方,宇治の茶陶の朝日焼16代目の方たちです。伝統工芸品を未来につなぐためには,「素材・技術・ストーリー」に分解して,異業種で展開し,現代に生かすことができないかと考えました。
 経産省からスポンサーをお預かりさせていただいて事業を6年間展開しており,「Japan Handmade」というプロダクトのブランドをつくりました。西陣織のソファーの他,料理道具を金網工芸で作る「金網つじ」が編む技術を使ってランプシェードを作りました。テーブルウエアは開化堂が手がけました。竹工芸でiPhoneケース,木工芸の椅子の技術でスツール,アート品などが出来ました。今,世界のバイヤーや多くの富裕層の方が商品をお求めになり,応援してくださっているという状況です。
 京都の後継者たちが案内する旅行サービス「Beyond KYOTO」も海外の富裕層向けに展開させていただいています。シンガポールのショールームに併設しているバーでは,京都の伝統工芸品に囲まれて飲めます。
工芸品の新ブランドが人気
 海外のブランドにも興味を持っていただきました。プティアッシュのエルメスのブランドなどとコラボレーションしたり,マライカのショールームのプロデュースをお手伝いさせていただいたり。ラグジュアリーブランドとは,本物の職人の技術に支えられ,長い歴史の中でお客様に選ばれ続けていることといわれています。プティアッシュのエルメスの6代目のパスカルさんという女性ディレクターは「自分たちエルメスがある意味で最近失ってしまったものを京都のあなたたちは持っている。一緒に仕事ができてうれしい」と涙ながらにお話しくださいました。
 昨年はパナソニックとコラボレーションをさせていただきました。パナソニックは今年100周年。「世界中に冷蔵庫,洗濯機は行き渡った,次の100年,社会をよりよくするためには何を作ればいいのか」と考えられ,「GO ON」の仲間たちと一緒にモノづくりをしていただくことになったのです。西陣織のスピーカーは,手をかざすと音が流れます。西陣織が使っている箔という技術が静電気を感じて音を鳴らすのです。冷える木桶,手のひらで音を感じるスピーカー,電気で発熱するホーローなどを京都の町家で実験的に展示しました。
 去年4月には,ミラノサローネという世界最大のデザイン見本市でベストデザインアワードとなりました。展示ではミラノアカデミアという美術館の地下の回廊を使って,50mのカウンター越しに職人が商品のプロトタイプを説明するという体験も提供しました。京都の美意識,アートと言われるような領域と連携してモノづくりをしていくため,「KyotoKADEN Lab.」を立ち上げて,家電の次の姿を模索するという探究活動を継続的にやらせていただいています。
余所者の強みで古都活性化
 オリンピックと同時開催の文化力プロジェクトで,去年は2件,内閣官房からご依頼をいただき,能と歌舞伎のプロジェクトをプロデュースさせていただきました。「夕暮能」という取り組みは,京都の社寺仏閣で金曜日の夕方を使って能を楽しんでいただく仕組みです。
 京都の太秦では「太秦江戸酒場」というプロジェクトにも取り組みました。映画村が閉まった後,セットの中に,京都の伝統工芸の職人や伝統芸能の役者,アーティストらに入っていただき,そこで遊んでいただくのです。年に2回開き,昨年11月には5回目を迎えました。町を歩いていると突然辻斬りが起きたり,暖簾をくぐって中に入ると本物の職人がお仕事をしていらっしゃり,遊郭のエリアでは大人限定でめくるめく世界があったりします。
 去年は「ワンピース(ONE PIECE)」という,世界で一番読まれている漫画が20周年を迎えたことで,作者の尾田栄一郎先生からお話をいただき,「京都麦わら道中記〜もうひとつのワノ国〜」というイベントになりました。「ワンピース」は「ワノ国」というシリーズがもうすぐスタートしますが,「ワンピース」のキャラクターたちが町中に散り散りになって,彼らが京都の文化と連携して体験をつくるということをプロデュースさせていただきました。京都市役所の中に手配書課を作り,登場人物の麦わらの一味の海賊を京都市が手配しているという設定にもしました。チョッパーというキャラクターはお菓子が好きなので,聖護院八ツ橋と一緒になり,売り出しました。
 自分の強みは余所者(よそもの)です。老舗で600年?700年続いてきて,挑戦したくてもできない立場の方もいますが,私は幸いにして失うものがある意味で何もない。「文化と産業をつなぐ」という役割を今後も挑戦していけたらと考えています。
(スライドとともに)




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