会 員

衛 藤  公 洋 君(中央銀行)

1962年生まれ。’85年東京大学卒業・日本銀行入行(阪神タイガース日本一の年)。2008年高知支店長(高知RCに入会)。’12年総務人事局長。’13年金融機構局長。’16年名古屋支店長(名古屋RCに入会)。’17年理事・大阪支店長。’17年5月当クラブ入会。

 今年1年,経済は「大分よくなってきた」という実感を共有していただけるのではないかと思います。1年前,米国のトランプ大統領当選で「トランプ相場」が始まり,円安と株高となりました。波はあったものの,株価がさらに上がって今年が終わろうとしています。日本経済はといえば,2013年,日銀には黒田東彦総裁が登場。「量的・質的金融緩和」,アベノミクスが始まり,物価目標2%には届きませんが,それ以前とは少し違う状況になっています。
 日銀の世界初の手法が今の政策に盛り込まれています。「イールドカーブ・コントロール」,要は10年物国債金利を0%程度にすることが目標の政策ですが,長期金利に目標を設けているのは世界初です。その上,ETF(上場投資信託),J―REIT(不動産投資信託)などを中央銀行が買うのも世界初。思い切った政策で「デフレではないかも」というところまで持ってきたのが現状であります。
 その上で,関西の景気にフォーカスすると,日本全体と同じですが,26年振りに高水準の景況感となっています。景気の牽引役は二つあり,一つは輸出や生産。昨年の半ばぐらいから,はっきり良くなっており,鉱工業生産では関西の好調が続いています。もう一つの牽引役がインバウンド。外国人観光客の消費は勢いを増していますが,この面でも関西は全国を上回っています。
「第4次産業革命」でも強み
 雇用情勢を見ると,失業率は歴史的な低さです。賃金が伸びて,消費に回るということを日銀は期待しています。しかし,いわゆる正社員の月給の部分はなかなか伸びていません。消費では節約志向を脱却できず,スーパーの販売額は横バイ圏内です。将来への不安が家計には根強く残っていると言われており,その反映だと思います。企業の設備投資の増加が鈍いという状態は変わっていません。関西にその傾向が強い。海外での設備投資やM&Aにお金を使い,国内の設備投資が鈍くなっているということなのかと思います。
 人口減少が見えており,将来不安が根っこにあると思います。人の減り方は全国平均に比べて関西が少しシャープであり,この成長の重しをどのように克服していくかということが来年以降の課題になっています。
 その点について,最近,こうした講演で聞かれた時は,「人口減少の逆風を乗り越えていく,その手がかりを関西はつかみつつある」と言っています。その力の一つはインダストリー4.0(Industry4.0)です。ものづくりに着目するときに使う言葉で,「第4次産業革命」のことです。IoTやビッグデータ等々の技術革新がかなりものづくりの世界や生活を変えていこうとしています。自動車分野では電気自動車や安全自動運転機能,「車のIoT」などで,素材や加工技術も重要であります。恐らく世界的に5年,10年と続く潮流だと思いますが,エレクトロニクス分野やそれに関連する機械,部品,素材産業は関西に集積しており,強みを持っています。この分野はアジア諸国がものすごい投資をしていますが,そことつながりが深いという意味でもアドバンテージがあると思います。
インバウンドが成長に寄与
 関西の外国人観光客数は,7〜9月の瞬間風速で見れば年間1,300万人ペース。インバウンドについて,「こんなペースでまだ伸びるのか」と質問を受けますが,「伸びる可能性は十分にある」と答えています。
 アジア諸国の1人当たりGDPを見ると,香港,韓国,台湾は高所得国になり,その予備軍にマレーシア,中国もあります。他にも成長著しい国はあり,ポテンシャルはまだまだ大きいと思います。
 「インバウンド消費は景気全体を押し上げるほど力強いものなのか」という質問も受けますが,「結構力強いんです」と答えています。「訪日外国人が関西で何泊泊まっているか」という数字を見ると,現在年間1,900万泊というペースで,毎日外国人が5.3万人ぐらいは泊まっているということです。2012年は1.7万人でしたので,人口が増えているのと同じです。一方,関西の人口は,この間に2,085万人から2,068万人まで17万人減っています。訪日外国人は毎日3.5万円,お金を使ってくれているのに対して,関西の平均的な人々は毎日3,000円の消費額ですから,人口の減少を補うぐらいの効果を既に生んでおり,成長に寄与しています。
「価格にシビア」文化も売り
 関西はやはり消費激戦区だと思います。ファッションサイトのZOZOTOWNという服の通販会社で,送料をお客さんの言い値で,というサービスを10月に1ヵ月間だけ実施しました。その時,関西の設定価格の低さが目立っていた。価格に対する見方が非常に厳しいことがよく表れています。
 消費者物価指数でも関西の食べ物の安さは際立っています。スーパーなどで買った場合,うどんは大阪で221円,東京では448円。外食などの安さも歴然としています。その分,味が落ちるかといえば,そんなはずもありません。それだけ厳しい中で消費業界は磨かれているともいえるのではないかと思います。関西のメリットとして,全国一厳しい消費者に鍛えられていることをもっとアピールしていく価値,余地はあると思います。これは外国人だけではなく,観光に関西へ来る日本人にも大きな魅力だと思います。
 したがって,来年の経済展望をすると,全国も良くなっていきますが,関西はそれを上回る力で成長していく,少なくとも手がかりはつかんでいると思います。
(スライドとともに)




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