(株)博報堂 ソロ活動系
男子研究プロジェクト・リーダー

荒 川  和 久 

1963年生まれ。早稲田大学法学部卒業。博報堂入社後,自動車・飲料・ビール・食品・化粧品・映画・流通・通販・住宅等幅広い業種の企業業務を担当。現在,MD戦略センターAC企画局コンテンツアクティベーション部に所属,キャラクター開発やアンテナショップ,レストラン運営も手掛ける。独身生活者研究の第一人者として,テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・WEBメディア多数出演。著書に「超ソロ社会−独身大国日本の衝撃」(PHP新書)「結婚しない男たち−増え続ける未婚男性ソロ男のリアル」など。

 「ソロ社会」の「ソロ」とは「独身」という意味です。きょうは「超独身社会がやってくる」というお話をさせていただきます。
 今の日本は有配偶者の方がずっと多いのですが,約20年後の2035年には有配偶者が5200万人,独身者が4800万人(15歳以上)と,独身,既婚者が半々になると国が推定しています。「高齢化社会」と言われますが,同年の高齢者は3700万人と推計されており,未来の日本は独身者の方が増えているのです。
 理由の一つは未婚者の増加です。国が出している生涯未婚率は1980年代まで5%以下でしたが,急激な右肩上がりで,2015年の国勢調査では男性23.4%,女性14.1%になっています。これが’35年には男性が3割,女性が2割になると推計されています。
 実は今も日本の未婚男性のうち300万人は,結婚したくても相手がいないという状況があります。年齢層別の未婚男性と未婚女性の人口差分を見ると,20代から50代全体で300万人ほど未婚男性が余っています。独身の増加は離婚にも一因があり,戦後に比べるとずっと増えています。
 「ソロ社会」には,単身世帯,一人暮らしの増加の面もあります。以前は「夫婦と子ども世帯」が「標準世帯」と言われていましたが,’35年には23%まで落ち込む一方,約4割の世帯が一人暮らしになると言われています。単身世帯数の世界ランキングは,中国が1位の5800万世帯,2位はアメリカ3100万世帯,日本が実は3位の1600万世帯です。4位のロシアを含めた4ヵ国だけで世界の単身世帯の4割を占めています。
 ソロ人口が増えると,消費が増えます。結婚すると食費面は効率化できるためです。独身のエンゲル係数は非常に高く,データによると,調理食品,飲料,酒類,外食の消費支出額は,一家族(3.4人分)より独身の平均値の方が高くなっています。
バブル崩壊, 女性進出で未婚化
 未婚化がなぜ進んだのか。先ほどの生涯未婚率は1990年頃をきっかけに,ガーンと上がっています。このとき起きていたのが「バブルの崩壊」。「男女雇用機会均等法」も’86年に施行され,女性の社会進出も進みました。「年収別男女生涯未婚率」を見ると,年収の低い男性は生涯未婚が多い一方,年収の高い女性ほど生涯未婚が高くなっています。男の「下方婚志向」と,女の「上方婚志向」――要は男は学歴,年齢,収入が低い女性を希望する一方,女性は逆に自分より年齢,学歴,収入が高い男性を希望するため,マッチングとしてそぐわなくなってきました。
 さらに独身者に聞いた「結婚の利点」を5年ごとにまとめたデータでは,女性は「経済的に余裕が持てる」が圧倒的に増え,「愛情」を挙げた人は減っています。一方,「独身のメリット」の集計では,男性は「金銭的に裕福」が増えました。女性が結婚したいのは金のため,男が結婚したくないのは金のためという,身も蓋もない話になり,未婚化が進んでいくことになりました。
 さらに結婚25年以上の熟年離婚も急増中です。銀婚式を迎えてから離婚するというご夫婦が10%もいます。60歳以上のご夫婦に,「来世でも今の配偶者と結婚したいですか」という質問を投げかけたところ,男性の6割が「したい」と答えたのに対して,女性は3割しか「したい」と答えていないのです。
安定社会から流動社会に変化
 「ソロ社会の未来」がどうなるのか。一つには,世代論が通用しない時代になってくるのではないでしょうか。大半が結婚した時代というのは,大体20代〜30代で結婚して,30代〜40代で子育てをして,50代〜60代で引退をするという人生のライフステージが,皆一緒だったわけです。ただ,人口の半分が結婚しない独身生活をするということは,そのライフステージが皆同じように進むとは限らず,同じ環境で同じ年代の人が同じように生きていくという,世代で分けられる世の中ではなくなってきています。
 「個人化する社会」,ジグムント・バウマンという社会学者が言っていることですけれども,家族・地域・職場という安定,安心した強固な共同体がなくなっていくと指摘しています。
 人類は「三つの革命」のたびに共同体ができてきました。狩猟民族のときは血縁家族,農業革命は土地に命をかけ,「地縁」という地域の共同体が生まれた。産業革命では会社が生まれて「職縁」ができた。情報革命では,社会学者のマーク・グラノヴェッターいわく「弱い紐帯」,つまり個人のつながりで共同体をつくらざるを得ない。今まではソリッド社会(安定社会)だったのが,リキッド社会(流動社会)になっていくのです。
「拡張家族」で次世代を支える
 未婚化・非婚化・少子高齢社会化・ソロ社会化というのは避けられない現実です。だからといって,ソロ社会は絶望の未来ではないと思っています。
 高齢者1人を支えるのに,現役世代が2〜3人で支えなければいけないと言われているのですが,発想を転換して,アクティブに行動できる大人が次世代の子どもたちを支えると考えると,10人の大人が1人の子どもを支えればいい社会になるわけです。
 地縁血縁ではない,考え方や価値観で緩くつながる関係性を私は「拡張家族」と言っていますが,こうした概念が必要になるのではないでしょうか。
(スライドとともに)





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